世界を制したバトン王子
[AERA
]
あのシルク・ドゥ・ソレイユの常設劇場が、東京ディズニーランドの近くに誕生する。「シルクとしては日本初の常設劇場」ということで、既に公演期間も12年という大ロングランが決定している。そこに唯一日本人として出演が決定している人がいる。「バトン王子」――稲垣正史さん(30)である。
恐らくご存じない方のほうが多いだろう。
バトンとは、パレードなどで女の子たちがくるくる回したり天高く放り投げたりしているあの細い棒のこと。正式名称は「バトントワリング」。れっきとしたスポーツの一種である。
稲垣さんはバトントワリング競技男子シニア部門で世界チャンピオンに11回輝き、史上最多である23個の金メダルを獲得した。ファンクラブができるほどの人気を誇っているらしく、大会に出れば女子たちの黄色い声援が飛び交うという。
シルク出演の打診を受けたのは2006年。オーディションを受けに行き、演出家であるフランソワ・ジラールから「ファンタスティックなアーティストだ」と大絶賛される。そして準主役級の大抜擢をされることとなったのだ。
元々シルク・ドゥ・ソレイユに所属している日本人は数名のみ。
「キダムがきます」「ドラリオンがやってくる!」とことあるごとに日本にやってきては抜群の集客力を見せ付ける割に、日本という土地への定着感が薄いなとは思っていた。
そこに今回の常設劇場建設と、日本人出演者の決定。上手くいけば、今後日本の中でエンターテイメントの定番にまで上り詰めるかもしれない。
しかし......この「スポーツで活躍する男性選手にとりあえず"王子"つけとけ!」的な風潮はいかがなものか。どれだけ輝かしい経歴を残していようと、どれだけ彼自身が努力を重ねていようと、「王子」がつくだけで安っぽく思えてしまうのは私だけだろうか。
今後「シルク・ドゥ・ソレイユシアター東京」の全貌が明らかになっていく中で、どうか「バトン王子」の異名が定着しませんようにと祈るばかりである。
當間 光沙




