『人にやさしい技術』を読んで
[WEDGE]
最近はバイオといえばバイオエタノール、というくらいにバイオエタノールがはやっている。おかげでトウモロコシやサトウキビは価格が高騰し、今年は茹でトウモロコシもほとんど食べる機会がなければ、砂糖も控えめにしなければならない。まあ、後者はバイオを気にしてというよりもメタボリックを気にしてなのだが。ともかく、そんなバイオではあるが、バイオの力は燃料だけではない。
源麹研究所の社長を務めている山元正博さんは、麹を研究し、高い価値を持つ焼酎の廃液を処理する、資料を製造するといった可能性を発見し、海外進出を含めて多方面にビジネスを展開している。
焼酎の廃液を麹菌に発酵させることにより、焼酎廃液のネックであった水分を飛ばす技術を発見し、一トンあたり7000円だった処理費用を1800円程度まで抑えた。
また、バイオエタノールのブームの中でトウモロコシの価格が高騰し、畜産農家が悲鳴を上げる中、エタノール廃液を飼料化する技術を生み出した。5%の飼料を混ぜることによって、通常より13%も少ない餌で、鶏がきちんと育つと言う。
トウモロコシの消費が13%なくなれば、金額にして300億円もの支出がなくなる。さらに、こうして育った鶏は肉質もよく、牛や豚にも広く応用が利くという。
驚かされるのは、麹菌の威力だけではない。むしろ、ビジネスマン一般に対して教訓となるのは、山元さんのビジネス展開の方法の方かもしれない。
東京大学農学部修士課程を卒業した後に、焼酎の麹菌を作っている河内源一郎商店に入った山元さんが焼酎の廃液処理に関わったのは、最初は自前での廃液処理が目的だった。
だが、山元さんはそこで終わらず、麹菌の威力を売り込むために自作の飼料添加物を農家に無料で提供して牛の飼料としての売込みを行い、2001年にBSEが見つかると次は豚の飼料としての営業を始めた。その方法は、『自分で育てた黒豚を農家に持っていってしゃぶしゃぶを作り、食べ比べてもらう』である。
今は海外に眼を向けている山元さんは、海外にコネがあるわけでもなく、インターネットで会社を調べ、メールを送り、返信が来たところにサンプルを送り、使ってもらうという方法で中東やアメリカへの開拓を進めている。その直接的で行動的な営業の方法には、清清しささえ感じられた。
野中 潔




