あなたに観てほしい映画
[BRUTUS]
人は日々食物を食べ栄養を摂取し、細胞に取り入れることで自らの血肉を造り出す。脂質、糖分、蛋白質。各人異なったものを口にしているのだから、身体に取り込まれる栄養素の割合も十人十色だ。それはひょっとしたら見た目に表れるかもしれないし、健康診断の結果という形で突きつけられるかもしれない。それでは、人の"内面"というものは一体どのように形成されるのだろう。
身体のように明確に、目に見える差異を見つけることはできないかもしれない。けれど百人いれば百人分の中身がある、それだけは確実だ。
一概には言えないだろうが、こういう答えはどうだろう。――人の内面は、見て、聴いて、感じてきたものが少しずつ蓄積されて形成される。
そしてその蓄積されていくものの中に、恐らく『映画』も含まれていると思うのだ。
今回紹介する特集では、「あなたに観てほしい映画」と題して、臨時のシネマコンシェルジュとなった22人の著名人たちに、テーマ(22人それぞれがリレー形式で次の担当者に質問を与えていく)に沿った映画を紹介してもらっている。
宮崎あおい、佐藤浩一といった人気の役者から、井上陽水、椎名林檎など歌手、劇作家・宮沢章夫やクリエイティブディレクターの箭内道彦まで、その人選は実に幅広い。その甲斐あってか、紹介されている映画もメジャーマイナー入り混じり、初めて題名を聞いたという作品も少なくなかった。
特集の導入部に記されていた、「あなたが次に観るべき映画を探す時、信頼の置ける人に聞いてみるというのは最善の策かもしれない」という文言と、次の言葉に納得した。「なぜなら、映画のこととなると、聞かれた人は、年齢、仕事、趣味、性格......あなたのことを最大限考慮し、思いを馳せ、愛情を注ぐように紹介してくれるものだから」。
「私」を造り上げたものの一部を、「誰か」に紹介する。それは自分をさらけ出すことにも繋がるし、自らに取り込んだ栄養を分けてあげるのにも近いのかもしれない。
時には、大切な誰かにとっておきの作品を紹介してみては如何だろうか。
當間光沙



