7. 言語使用と言語能力
前回のエントリーで書いたように、TOEICのテストというのは、かならずしもコミュニケーション能力を測るテストとして優れているわけではありません。なぜかというと、「受験者が英語を実際に使う状況」をあまり正確に再現していないからです。では、いったいTOEICの点数は何を表しているのでしょうか?
実は、TOEICの点数で表されているのは、英語に関する知識なのです。これは、問題を見れば、日を見るよりも明らかです。前回も延べたように、英語を使う能力を測定するためには、受験者の人が実際に英語を使う状況にできるだけ近い設定の中でテストを行う必要があります。
しかし、TOEICではこの原則が守られておらず、すべての問題は現実のコミュニケーションではありえないマーク式です。また、設問内容の多くは、単語や文法に関する知識を問うものです。これらのことから、TOEICで測定されているのは、英語を実際に使う能力ではなく、英語に関する知識であることがわかります。
さて、そうするとここでまた新たな疑問が一つわきあがってきます。果たして、英語に関する知識を測定する試験の成績から、英語を使う能力がわかるのでしょうか?
まず、英語の知識がまったくない人よりもある人の方が英語を使う能力が高いということは、直感的にわかると思います。ですから、英語の知識と英語を使う能力は何らかの形で関係があるということに関して問題はありません。むしろ問題なのは、「英語の知識と英語を使う能力はイコールなのか?」ということです。
もしも英語の知識=英語を使う能力であれば、TOEICの点数はそのまま英語を使う能力を繁栄していることになるので、仕事で英語を使うためにはTOEICの勉強をすればいいということになります。逆に、英語の知識=英語を使う能力が成り立たないのであれば、英語を仕事で使うためには、英語の知識をつける勉強とはほかに英語を使うための訓練を行うことが必要になってきます。はたして、どちらなのでしょうか?
解答を先に言ってしまえば、英語の知識=英語を使う能力という等式は成り立ちません。その理由は二つあります。一つは、英語を実際に使用する場で、英語の知識が必ずしも必要になるわけではないからです。二つ目は、どのような英語知識を必要とされるかは、英語をどのようなシーンで使用するかによって異なるからです。
日本語の例を考えてみればわかりますが、例えば日本語学者だからといって、消費者の購買意欲を誘うようなコピーを書いたりセールストークをしたりできるわけではありません。その言葉についての知識が豊富であればあるほど、その言葉をうまく使えるというわけではないのです。次に、では購買意欲を誘うようなコピーを書く事のできるコピーライターが、常に上司を納得させられるような企画書を書き上げられるかというと、必ずしもそういうわけではありません。同じ書くという分野でシーンが異なれば、必要とされる知識は異なってくるのです。
以上見てきたように、英語の知識=英語を使う能力という等式は必ずしも成り立ちません。確かに、一般的に言って、英語の知識が多い人は英語を使う能力が高いといえます。しかし、ある程度のラインを超えたら、その後は英語に関する知識ではなく英語を使う能力が大切になってきます。また、英語を使う上で必要な英語の知識というのも必ずしも一枚岩ではなく、シーンごとに必要とされている知識が異なってくるのです。
一般的に、日本の英語教育では、英語に関する知識と英語を使う能力がごっちゃにして考えられがちです。また、シーンによって必要とされる英語の知識が代わるという考え方はあまり受け入れられていません。だから、教師の中には、英語に関する知識を身につけばどんな場面でも英語は使えるようになるという風に主張する人が多いです。その結果、TOEICの点数が高くなれば英語は使えるようになるという風潮が蔓延してしまいました。
しかし、実際は先ほど見たように、英語に関する知識と英語を使う知識は違いますし、またシーンによって必要とされる英語の知識は違います。ですから、社会人で自分が実際に仕事で英語を使っていきたいと考えている人は、闇雲にTOEICの点数を上げようとする前に、自分がどのようなシーンで英語を使うのかをもう一度考え直してみましょう。そして、そのシーンがはっきりしたら、その後は自分に必要のない知識は捨ててしまい、自分に必要とされている知識だけを身につけるようにしましょう。
まとめ
TOEICの点数は、あくまで英語に関する知識量を示しているだけで、実際に英語が使えるかを示してはいない。英語を実際に使えるようなりたいなら、実際に自分がどういう風に英語を使いたいかをまずイメージしないといけない。







