仕事がデキる人の“捨てる英語術”
TOEICテストがダメなあの人が、仕事で英語をバリバリ使える理由

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4. The best is the enemy of the good.

突然ですが、皆さんは項羽を知っていますか?そう、中国の歴史に出てくる、漢の高祖劉邦と戦ったあの項羽です。漢文の授業で「虞や虞や、汝をいかんせん」とやったのを覚えている方もいるかもしれません。この「虞や虞や、汝をいかんせん」というのは、司馬遷の史記の項羽本記に書かれているのですが、その中に英語を学ぶということを考える上で非常に興味深いエピソードがあるので、今回はそれを取り上げることにしましょう。

項羽は、若い時に書道や剣術を学ぶのですが、そのどれ一つとしてものになりません。それをみたおじさんの項梁が項羽をしかると、項羽は「書道なんて名前が書ければいいし、剣術は一人の敵しか相手にできない。こんな詰まらんもの勉強するよりは、万人の敵を倒すための兵法を勉強したい」と言って反論します。これを聞いておじさんは項羽に兵法を教えます。ところが、項羽はこれだけ大きな事を言って学び始めた兵法を、大筋がわかるとすぐやめてしまうんですよね。

この話のどこが英語を学ぶ上で示唆的かというと、それは大筋がわかるとすぐやめてしまうというところです。やっぱり、どんなことでも極めようとすると時間がかかるし、またそれを極めているとその専門家にしかなれないわけです。でも、実際に世の中で使おうと思ったら、大筋だけ抑えてしまって、細かいところは専門家に頼めば十分なんですよね。むしろ、ここで兵法の専門家にならなかったこそ、項羽は将軍として大活躍ができたのです。

僕らは目の前に問題があるとどうしてもそれを解けるようになろうとしますが、しかし人生全体のコストと言う観点から考えると、その問題自体がそもそも解くに値しないと言うことが往々にしてあるわけです。なので、問題を解く前にそもそもその問題が特に値するかをきちんと考えなければいけません。それを見極めず、全てを解くことを目指そうとするのは、専門家になろうとする人にはいいかもしれないんですけど、そうじゃない人にとってはむしろ害の方が大きいといえるでしょう。

これと同じ事を言っているのが、今回のタイトルでも取り上げた、The best is the enemy of the good.という諺です。実は、この諺はもともとThe good is the enemy of the best.という諺がもとになっています。The good is the enemy of the best.とはベストに到達するためには、グッドになるためとは違ったやり方が必要になって来るという意味です。しかし、逆もまた真なりで、グッドになるためには、必ずしもベストになるためと同じやり方でやる必要はないのです。だからこそ、The best is the enemy of the good.もまた諺になったのです。

僕自身もかつてはそうでしたが、英語の先生の中には、ベストの英語力を身につけるための方法論を生徒に教えている人が多いです。なぜかというと、先生という専門職ではベストの英語力が必要とされるので、どうしても生徒もベストの英語力をつけることがいいことだ思い込んでしまうからです。しかし、項羽のエピソードからもわかるように、実際に仕事で英語を使う人の英語力というのはベストである必要はありません。ですから、英語が上達するための方法論というのも、必ずしもベストを目指すためのものと一致してなくてもかまわないわけです。

もし自分が英語の勉強に挫折しかけたら、自分がベストを目指すべきなのか、それともグッドでかまわないのか、英語の勉強を投げ出す前にもう一度考えて見ましょう。そうすれば、自分が英語とどう付き合うべきかが見えてくると思います。

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プロフィール

井上大輔(いのうえ・だいすけ)

大学院時代に英語講師を始め、現在は日米英語学院やELSなどで、学生から社会人まで様々な層に英語を教える。大学院卒業後、語学を使った起業を志し、その際に仕事で英語を使うということについて真剣に向かい合うようになり、その結果従来の「英語はできればできるほどいい」という考え方に対するアンチテーゼとしての「捨てる英語術」を思いつく。現在は、大学院時代の専門であったフランス語の語学参考書の執筆にいそしみつつ、ビジネスマンが洋書を効率よく読めるようになるためのプログラムを考案中。

・早稲田大学英文学科卒業、早稲田大学文学研究科仏文修士
・資格 TOEIC 980
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